木曜日

美しき天才について

 
ドアタシは恐ろしいくらい
彼の映像の虜になっている。
 
 
 

トムの肌を傷つける畑の枯れた
トウモロコシのようにそのざらついた感触が、
見終えた後もいつまでも尾を引いていて、切なさが止まらない。

片田舎の閉塞感、若者の焦燥、 抑圧された暴力、いびつな愛情。
淡々とした時間の経過を、グザビエ・ドランはまるで絵画のように切り取っていく。

1カットを「もっと見ていたい」と思う映画はどれだけあるだろう。
移りゆく映像を留めておきたいと願わずにはいられない。
泥臭くも美しい、彼の息遣いを感じられる。

きっと、みんな、ドランに恋をしているんだ。
 
 

生と死に対する、ぞっとした恐怖感を思い出させてくれるのは、
いつだって映画だ。
 
映画を鑑賞している間に、必ずといっていいほど感じてしまう、
死を迎える瞬間
。わたしの魂はどうなるんだろう、なにを想う?どんな感覚?
目の前が真っ暗になってしまうのかしら?
わたしの人生が全てそこで終わってしまうの?
 
 
それは、そういった、どうしようもない恐怖感なの。
だから、映画館を出た後にヒトと顔を合わせるのも触れるのも恐い。