ありそうで、なさそうな、ちょっと不思議なお話が「冬の河童」である。
何にもないもの、ただ、少し芽が生えた、それだけのこと。
この映画は、ごく自然に闇を捉えていた。
暗いお部屋の中で、闇を観るなんて奇妙な体験。
家族ではないが、共同体として、
川のほとりに建つ古びた一軒家に住んでいるのは、
サケ子、玉子、一太郎、おばかの名前の登場人物たち。
彼らは、川の人間だ。
この川側の家に住む人間たちの母親は父親と離婚して海側に住んでいる。
川と海。
川と風と透明な光り。
木々の音や、川の水の音、ちりんちりん風鈴の音。
扉の開け閉めの音。ピアノが語る ぎこちないクラシック。
倉庫に並ぶ、薄汚れた可愛い陶器たち。
大きく編まれたホワイトのアランニット。
男の子が着ちゃうの?と微笑ましくなるホワイトのロゴスウェット。
理由は思い出せないけど、何故か思い入れがある真っ白い牛乳。
彼らの生活を見守る気まぐれな猫探偵。
これらは磨き抜かれた美しいイメージたちだった。
簡単に創り上げることなんて不可能。
シンプルだけど緻密なモノたち。
この家に住む人間たちの微妙な感情たち。
それらの感情はめったに激することはないが、確実に変化していく。
その確実さは風の動きのように自然で、心に深い印象を与え、残る。
この物語は、感情と日常を捉えるだけ。
予想外から降ってくるショットの一つ一つが浪漫だ。
私が大好きな「三月のライオン」に匹敵する素晴らしい邦画だった。
サケ子って名前にうっとりしたけど、
やっぱりちょっと、おばかなお名前。
そういえば、また映画館通いが復活してます。
最近映画館で観たのは「愛の渦」。「SEXサークル」「乱交パーティー」がテーマ。
何が面白いって、非日常的な世界と思いきや、
日本人らしい独特の間とか、気遣いとか、嫉妬心とか描かれているから、
思わずくすっと笑う事ができる映画でした。
なんで日本人ってこんな所までにきて真面目なんだろう。
楽しいねえ。
こういった作品大好きだから
「ほおーこういうシステムなのね、ふむふむ」と勉強になりました。
恋人同士で笑って観ることができたら、
あなたたちは最高なんじゃないかと思います。
久しぶりの邦画便りでした。では。